では、釈尊の悟りの本質は何だったのでしょうか。 釈尊は、自分の心を丹念に吟味することから始めました。 私は何者か。私の本性とは何か。 自己を定義するものは何か。 長い思索の末、彼は深い悟りに到達しました。 そして、存在するのは「自己」という概念だけであり、実質的な根拠を欠いた、単なる思い込みにすぎない事。 そして、この思い込みは、彼の存在の核心に刻み込まれ、この認識された自己を保護し、それを永続させるための、さまざまな機能を生み出す基盤となっていました。
彼は、「自分」という思い込みが、他者や他の存在から、自分を区別し、他者と生存競争をするために、「自分」を維持する強い機能を持っていることを発見したのです。
例えるなら、大海原に浮かぶ一つの波が、突然 "私 "という自覚に目覚めたとしましょう。 この一つの波としての、新たな自己認識から、大海原を見渡すと、無数の波が生存競争を繰り広げていることに気づきます。 そして、競争に屈するまいと決意し、自分の存在を強化しようと努力し、争いの中でより強く、より大きな波として浮上しようと、努力するのでした。
しかし、本当の真実は、海の中のすべての波が、互いに繋がっていることであって、それぞれの波の見かけの個性や波の区別は、思い込みの産物に過ぎないのでした。その事に気付いた波は、波としての思い込みを放棄し、広大な大海原との本質的な一体性を認識しました。その瞬間、波としての自己、という幻想は消え去り、切れ目の無い大海原の広がり全体と1体となるのでした。
要するに、仏陀の悟りとは、利己的な妄想の枠を超越し、すべての存在の無限の相互関係の一体性を認識し、それと1体となる事を意味していたのです。
